無機化学の工業的製法まとめ!仕組みから考えよう

無機化学の工業的製法まとめ!仕組みから考えよう

あなたは工業的製法で、

「どうしてこんな反応になるの?」
「なんでわざわざこんな手順をとるの?」
「この反応の触媒はなんだっけ…」

などと思ったことはありませんか?

工業的製法は複雑な手順であることも多く、
さらに覚えるべき言葉も多いです。

「反応の理由」を考えずに丸暗記しようとしては、
複雑な手順を覚えることは不可能です。

この記事では高校で習う工業的製法をまとめました。

ここの内容をしっかりと読むことで、
もう工業的製法で迷うことはなくなります。

センター試験などで無駄な時間がかからず、
無機化学の分野は「瞬殺」できてしまうでしょう。

それでは順番に見ていきます。

工業的製法まとめ

無機化学の工業的製法は以下の通り。

①アンモニアソーダ法
②接触法
③オストワルト法
④ハーバーボッシュ法
⑤アルミニウムの製法
⑥鉄の製法
⑦銅の製法

以下ではそれぞれの概要を説明した後に、より詳しい解説へのリンクを貼っておきます。細かい知識まできちんと確認したいあなたは、それぞれの記事を確認してみてください。

①アンモニアソーダ法

アンモニアソーダ法は、
アンモニアから炭酸ソーダ(Na2CO3)を作る方法。

Na2CO3を作るためには、
沈殿生成反応」と「熱分解反応」を利用します。

Na++HCO3→NaHCO3
2NaHCO3→Na2CO3+H2O+CO2

HCO3を作るためにCO2を水に溶かしたいですが、
溶解度が小さくあまり溶けません。

そこにアンモニアをいれることで、
中和反応」を利用してHCO3を作ります。

CO2+NH3+H2O→HCO3+NH4+

以上をまとめると、

NaCl+CO2+NH3+H2O→NaHCO3↓+NH4Cl
2NaHCO3→Na2CO3+H2O+CO2

これが反応のキモです。

より詳しい説明は以下をチェック!

アンモニアソーダ法(ソルベー法)まとめ!〜仕組みから歴史までを詳しく解説〜

実際の工業的製法では、効率をあげるために「炭酸カルシウム」をうまく利用します。これについても上の記事を確認しておきましょう。

②接触法

接触法は、
SO2をV2O5触媒に「接触」させることでSO3を作り、
濃硫酸を作る方法。

このV2O5触媒が発見されたこと自体が、
接触法のキモです。

接触法の解説!濃硫酸の工業的製法

③オストワルト法

オストワルト法は、
アンモニアを酸化させて硝酸を作る方法。

アンモニアを酸素と反応させると以下のようになります。

4NH3+3O2→2N2+6H2O
N2+O2⇄2NO

そして高温・白金触媒の条件を使うことで、
平衡反応が右に傾き、以下のようになります。

4NH3+5O2→4NO+6H2O

NOは低温で自然にNO2になり、
これを水に溶かします。

2NO2+H2O→HNO3+HNO2

亜硝酸は分解されやすく、

3HNO2→HNO3+2NO+H2O

となるため、結果的には、

3NO2+H2O→2HNO3+NO

となります。

より詳しい説明は以下をチェック!

オストワルト法の仕組みを解説!

④ハーバーボッシュ法

ハーバーボッシュ法は、
通常は低温でゆっくりしか進まないN2+3H3⇄2NH3の正反応を、
Fe3O4触媒を発明することで大量生産に成功した方法です。

そんなハーバーとボッシュの歴史や、
未来のアンモニアの製法も以下で解説しています。

ハーバーボッシュ法を解説!

⑤アルミニウムの製法

イオン化傾向が高いアルミニウムは単体にするのが難しく、
溶かしたアルミナAl2O3を直接電気分解する、
融解塩電解」を利用します。

アルミニウムの製法!融解塩電解を詳しく解説!

アルミニウムの原料はアルミナに不純物が混ざったボーキサイト。上の記事ではボーキサイトからアルミナを取り出す方法も詳しく説明しています。

⑥鉄の製法

単体の鉄を手にいれるためには、
酸化鉄を一酸化炭素で還元します。

この際、不純物を取り除くために、
炭酸カルシウムを利用するんです。

鉄の製法は名前をたくさん覚える必要があるので、
ぜひ以下をチェックしてください。

鉄の工業的製法を解説!

⑦銅の製法

単体の銅は、
不純物の多い粗銅を「電解精錬」することで作ります。

電解精錬はただの電気分解なので、
電気分解さえ理解しておけば大丈夫でしょう。

以下の記事では、そもそも粗銅はどう作られるのか、
という内容から実際の計算問題の解説までしているので、
ぜひチェックしてください。

銅の電解精錬を解説!

まとめ

工業的製法は確かに複雑ですが、
ひとつひとつの工程に理由があります。

それらをただただ丸暗記していては大変です。

「納得感」を持ちながら学んでいきましょう。

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