接触法の解説!濃硫酸の工業的製法

接触法の解説!濃硫酸の工業的製法

今回は硫酸の工業的製法である接触法の解説です。

接触法は工業的製法の中では比較的単純ですが、
全くの丸暗記をしていると足をすくわれてしまいます。

この記事では、
接触法の仕組みや反応式の作り方はもちろん、
接触法が作られる歴史も紹介します。

軽い読み物感覚で読んでもらえればと思います。

接触法とは

接触法」とは、工業的に硫酸を大量生産する方法です。

錬金術の時代、
「金属を溶かす液体」として硫酸が発見されます。

硫酸の金属を溶かす性質を使えば、
不純物の混ざった銀や金を純度の高い状態にできます。

この性質から、硫酸は錬金術の時代から重宝されてきました。

このことから、
より効率的に硫酸を作る技術が長年研究されてきたのです。

そんな研究の中で発見された大量生産の方法が、
硫黄を燃やすことでできるSO2を触媒のV2O5に「接触」させてSO3を作る接触法。

「なんでV2O5なんてものを使うんだ?」
と疑問に思う人も多いと思いますが、
この触媒が見つかったことこそが接触法のキモなのです。

V2O5を用いる接触法が発明されたのが1915年。

長年の研究の末見つかったこの製法が、
100年以上経った現代でも利用されています。

18世紀から19世紀後半まで「鉛室法」が用いられてきました。その後発明された白金触媒を用いるという発想が接触法の始まりです。現在ではV2O5にFeやAlを混ぜる、表面積の大きいかつ400℃の高温に耐えられる構造を考案するなど、様々な工夫がなされています。

接触法の流れ

接触法の大きな流れは、

①硫黄Sなどを燃やしてSO2を作る
②V2O5触媒によってSO2をSO3にする
③既存の濃硫酸にSO3を溶かす
④希硫酸を混ぜ合わせる

です。

各段階に分けて見ていきましょう。

①硫黄Sなどを燃やしてSO2を作る

まずは硫黄を燃焼させて、SO2を作りましょう。

S+O2→SO2
現在は石油を精製する過程で硫黄が手に入りますが、昔は「黄鉄鉱(FeS2)」を利用していました。
4FeS2 + 11O2 → 2Fe2O3 + 8SO2
たまに入試試験でも問われるので注意しましょう。式は複雑ですが通常の燃焼反応です。

②V2O5触媒によってSO2をSO3にする

ここが接触法のキモの部分です。

V2O5触媒にSO2を「接触」させます。

2SO2+O2→2SO3(約400℃)

③既存の濃硫酸にSO3を溶かす

SO3を水に解かせば硫酸は作れますが、
その反応はあまりに激しく、溶液が飛び散ります。

そこで一旦濃硫酸に吸収させて、
それに希硫酸を混ぜることで水と反応させます。

SO3が過剰に溶けた濃硫酸を「発煙硫酸」と呼びます。なんか強そう。

④希硫酸を混ぜ合わせる

発煙硫酸に対して希硫酸を混ぜて硫酸をつくります。
発煙硫酸内のSO3と希硫酸内のH2Oが反応して、

SO3+H2O→H2SO4

まとめ

今回は接触法の説明でした。

接触法は、

①硫黄Sなどを燃やしてSO2を作る
②V2O5触媒によってSO2をSO3にする
③既存の濃硫酸にSO3を溶かす
④希硫酸を混ぜ合わせる

によって、

と変化させる方法です。

触媒のV2O5は長年の研究で発見されたもので、
基本的には覚えるしかないです。

時々他の工業的製法と見比べて、
思い出してみましょう。

無機化学カテゴリの最新記事