さよなら丸暗記!気体の製法まとめ

さよなら丸暗記!気体の製法まとめ

気体の製法は一見覚えることが多く、
多くの高校生が苦労している分野です。

気体の製法を覚えられないのは、
化学反応の本質を理解していないからです。

ここでは気体の製法を楽々暗記するための、
基本的な化学の考え方をお教えしますね。

ここでお伝えする化学の考え方を身につけることで、
1つ1つの製法を「覚える」のではなく「理解する」ことができ、
圧倒的に暗記が楽になるでしょう。

「あれ、意外と覚えること少ない?」と感じてきます。

化学の考え方の原理原則を無視していては、
なかなか知識が定着しないどころか、
暗記量の多さから勉強に手がつかなくなってきます。

ぜひ最後まで飛ばさずに読んでみてください。

気体の製法の考え方

学校によっては、
「気体の製法は丸暗記だ!!」
と教えるところもあるようです。

でもよく考えてみてください。

これだけ科学が進歩した現代に、
偶然見つけた化学反応で気体を作っていると、
本当に思いますか?

普通科学者が気体を作りたいと思ったら、
「どうやって作ろうかなあ」
と考えるはずです。

気体の製法にだって、
必ず理由があるはずなんです。

「どうやって作ろう?」と考えよう

あなたが科学者で、
「気体の塩素を作って欲しい」
と言われたらどうしますか?

「どうやって作ろう?」
「どんな反応を起こせばいいのだろう?」
「どんな材料がいるんだろう?」

こんなことを考えますよね。

このように当然、
何反応を起こせばいいのかを考えるのが普通です。

そしてあなたが知っている無機化学の反応は、
全部で「たった6つ」しかありませんね。

↓6つの反応を知らない人はチェック!

【永久保存版】無機化学の反応はたった6つ!

先ほどの例であげたように、
気体の塩素を作れと言われたとしましょう。

6つの反応を順番に思い出していくと、
以下の還元反応を起こせば塩素ができそうです。

2Cl→Cl2+2e

材料として例えば塩酸HClを用意すれば良さそうです。

そしてこれを酸化してあげればいいのだから、
何か酸化剤を用意すればいいでしょう。

最初に頭に浮かびそうな過マンガン酸カリウムKMnO4を入れてみましょう。

2KMnO4+16HCl→2MnCl2+2KCl+5Cl2+8H2O

無事塩素を作ることができました。

このように、気体を作るときだって、
理由があるということです。

「知ってる塩素の製法と違う!?」と思った人も多いでしょう。上の方法で作ることも可能ですが、ここに実験の都合が関わってくることによって以下の製法が生まれました。

MnO2+4HCl→MnCl2+Cl2+2H2O(加熱)

詳しくは「気体の製法各論」で説明します。

気体の製法まとめ

気体の製法を個別に説明する前に、
入試レベルで暗記すべき製法をまとめてしまいます。

反応原理ごとにまとめるので、
「なぜ作れるの?」と考えながら目を通してください。

気体の製法まとめ
(1)酸化還元反応で作る気体
 ① MnO2 + 4HCl(濃)
   → MnCl2 + 2H2O + Cl2↑(加熱)
 ② Zn + H2SO4(希) → ZnSO4 + H2
 ③ Cu + 2H2SO4(濃)
   → CuSO4 + 2H2O + SO2↑(加熱)
 ④ 3Cu + 8HNO3(希) → 3Cu(NO3)2 + 4H2O + 2NO↑
 ⑤ Cu + 4HNO3(濃) → Cu(NO3)2 + 2H2O + 2NO2

(2)弱酸・弱塩基遊離で作る気体
 ① FeS + H2SO4 → FeSO4 + H2S↑
 ② CaCO3 + 2HCl → CaCl2 + H2O + CO2
 ③ Na2SO3 + 2HCl → 2NaCl + H2O + SO2
 ④ 2NH4Cl + Ca(OH)2
   → CaCl2 + 2H2O + 2NH3↑(加熱)
 ⑤ CaC2 + 2H2O → Ca(OH)2 + C2H2
 ⑥ CaCl(ClO)・H2O + 2HCl
   → CaCl2 + 2H2O + Cl2

(3)揮発性の酸遊離で作る気体
 ① NaCl + H2SO4(濃) → NaHSO4 + HCl↑(加熱)
 ② CaF2 + H2SO4(濃) → CaSO4 + 2HF↑(加熱)

(4)分解反応で作る気体
 ① 2H2O2 → 2H2O + O2↑(MnO2触媒)
   2KClO3 → 2KCl + 3O2↑(MnO2触媒、加熱)
 ② NH4NO2 → 2H2O + N2↑(加熱)
 ③ HCOOH → H2O + CO↑(濃硫酸・加熱)

米印をつけた反応は実験室の都合などにより、
注意が必要な反応になっています。

ぜひ各論を見逃さないようにしてください。

気体の製法各論

それでは気体の製法を細かく見ていきましょう。

全てに目を通すとかなりの量なので、
先ほどのまとめを見て疑問がある部分から
順番に見ていくといいでしょう。

どこから見ていいかわからなければ、
米印を優先してもいいです。

(1)酸化還元反応で作る気体

①塩素Cl2

先ほど説明のように、
酸化還元反応から以下のように塩素を作れます。

2KMnO4+16HCl→2MnCl2+2KCl+5Cl2+8H2O

しかし過マンガン酸カリウムは酸化力が強く、
液体の塩酸に混ぜてしまうと反応が全て完了するまで、
毒性の強い塩素が発生し続けます。

そこで酸化力の小さい「二酸化マンガン」を使います。

二酸化マンガンは、
加熱をしないと反応が進みません。

二酸化マンガンを使えば、
不慮の事故で塩素が漏れるようなことがあっても、
火を止めることで即座に反応を止めることができます。

二酸化マンガンを利用した場合の反応式は以下です。

MnO2 + 4HCl(濃)
  → MnCl2 + 2H2O + Cl2(加熱)

この反応式を利用する理由も、
加熱する理由も明白ですね。

加熱するため揮発する塩化水素HClや水への対策が必要になります。

②水素H2

水素イオンH+を含む溶液に、
よりイオン化傾向の低い金属を入れれば良さそうです。

Zn + H2SO4(希) → ZnSO4 + H2

電離してH+を放出して欲しいのだから、
当然濃硫酸ではなく希硫酸です。

③二酸化硫黄SO2

濃硫酸が酸化剤となったときの生成物として、
二酸化硫黄SO2が発生していましたね。

ここに何らかの金属を入れれば良さそうです。

ただしイオン化傾向が高いと水素も生じてしまうので、
イオン化傾向の低い銅などがちょうど良いでしょう。

Cu + 2H2SO4(濃)
  → CuSO4 + 2H2O + SO2↑(加熱)
濃硫酸が強い酸化力を持つのは熱濃硫酸のとき。濃硫酸を酸化還元反応で使うのだから加熱は当然です。

④一酸化窒素NO

希硝酸が酸化剤となったときの生成物として、
一酸化窒素NOが発生していました。
③と同様に考えれば以下。

3Cu + 8HNO3(希) → 3Cu(NO3)2 + 4H2O + 2NO↑

⑤二酸化窒素NO2

濃硝酸が酸化剤となったときの生成物として、
二酸化窒素NO2が発生していました。

Cu + 4HNO3(濃) → Cu(NO3)2 + 2H2O + 2NO2
酸化還元反応では、生成物だけは暗記しないといけませんでしたね。不安な人は以下をチェック!
【合わせてチェック】
酸化還元反応生成物まとめ

(2)弱酸・弱塩基遊離で作る気体

①硫化水素H2S

硫化水素H2Sは弱酸なので、
例えば以下のような弱酸遊離反応で作れそうです。

S2- + H2SO4 → SO42- + H2S↑

具体例としては以下があります。

FeS + H2SO4 → H2SO42- + H2S↑
Q. 強酸ならなんでもいいの?
特殊な事情がなければ何でも大丈夫です。ただ実験室で手元にある強酸は塩酸や硫酸、硝酸なので、これらを使うのが普通です。

②二酸化炭素CO2

①と同様の考えから、

CO32- + 2HCl → 2Cl + CO2

具体例は以下。

CaCO3 + 2HCl → CaCl2 + H2S↑

③二酸化硫黄SO2

酸化還元反応でも作れた二酸化硫黄ですが、
水に少し溶けた状態のH2SO3は弱酸です。

SO32- + 2HCl → 2Cl + H2O + SO2

具体例は、

Na2SO3 + 2HCl → 2NaCl + H2O + SO2

④アンモニアNH3

弱塩基のアンモニアは以下の反応で作れそうです。

NH4+ + OH → H2O + NH3

よって一番簡単そうなのが以下です。

NH4Cl + NaOH → NaCl + H2O + NH3

しかしアンモニアは水に溶けやすいため、
液体のNaOH水溶液を使うと効率が悪くなります。

よって実験室では固体のCa(OH)2を使い、
加熱することで反応を進めます。

2NH4Cl + Ca(OH)2
  → CaCl2 + 2H2O + 2NH3(加熱)
溶液中なら簡単に電離して平衡の原理から反応が進みますが、固体なので熱のエネルギーで後押ししてあげる必要があります。

⑤アセチレンC2H2

え、アセチレンが弱酸!?

と思うかもしれませんが、
水素さえ持っていれば広い意味で酸と言えます。

ただしアセチレンの水素が電離する反応は、
電離定数が10-25程度と水より小さいため、
ほとんど起こりません。

アセチレンの塩であるカルシウムカーバイドCaC2に、
より強い酸を入れれば反応が起こります。

CaC2 + 2H2O → Ca(OH)2 + C2H2

アセチレンと比べれば水も強酸です。
水が一番お手頃に手に入るので水が良いですね。

高校レベルの化合物の酸としての強さは、
 H2SO4>HCl>HNO3>(無機塩)>COOH>炭酸>フェノール
  >水>アルコール>アセチレン>エタン>…
です。

⑥塩素Cl2

CaCl(ClO)・H2O + 2HCl
   → CaCl2 + 2H2O + Cl2

この反応自体は酸化還元反応です。

しかし以下のように見るのがわかりやすいです。

CaCl(ClO)・H2O + HCl → CaCl2 + HClO + H2O
HClO + HCl ⇄ H2O + Cl2

前者が弱酸遊離で、
塩素が気体となって後者の平衡が傾くことで、
自然に反応が進みます。

(3)揮発性の酸遊離で作る気体

①塩化水素HCl

強酸である硫化水素を作り出すといえば、
揮発性の酸遊離反応でしたね。

揮発性の酸遊離反応なのだから加熱は当然ですね。

NaCl + H2SO4(濃) → NaHSO4 + HCl↑(加熱)

②フッ化水素HF

フッ化水素は弱酸でありながら、
揮発性の酸遊離反応と同じ原理を利用します。

フッ素は電気陰性度最大の元素であり、
そのせいもあってフッ化水素が弱酸となっていますが、
通常ハロゲン化水素は強酸でした。

その例にもれず、実際の電離度に比べて、
水素イオンを押し付ける力は強酸レベルです。

よって濃硫酸+加熱でなければ、
フッ化水素は遊離しません。

CaF2 + H2SO4(濃) → CaSO4 + 2HF↑(加熱)
100%濃硫酸を超える酸性度を持つ物質を「超酸」といいます。フッ化水素に「五フッ化アンチモン」という物質を混ぜたものは最強の超酸で、濃硫酸の1016倍の酸性度を持ちます。

(4)分解反応で作る気体

これらについては前述の通り深く説明できません。

どうしても気になる人は以下を参考にしておいてください。

熱分解反応!世界一わかりやすくまとめてみた

①酸素O2

2H2O2 → 2H2O + O2↑(MnO2触媒)
   2KClO3 → 2KCl + 3O2↑(MnO2触媒、加熱)

②窒素N2

NH4NO2 → 2H2O + N2↑(加熱)

③一酸化炭素CO

HCOOH → Hsub>2O + CO↑(濃硫酸・加熱)

気体の収集法

合わせて気体の収集法もまとめておきます。

気体の収集法は製法と合わせて覚えるのではなく、
収集法の特性ごとにまとめて覚えれば十分です。

原則は水上置換法

水に溶けない気体は全て水上置換法です。

水上置換法が最も確実に必要な気体だけを収集できます。

よって原則は水上置換法と覚えておき、
水に溶ける気体を例外として覚えましょう。

水に溶ける気体の収集

入試レベルで覚えるべき水に溶ける気体は8つ。

・アンモニアNH3
・塩化水素HCl
・塩素Cl2
・二酸化炭素CO2
・二酸化硫黄SO2
・二酸化窒素NO2
・フッ化水素HF
・硫化水素H2S

結構ありますね(笑)

これに関しては暗記していくしかありません。

ただしもちろん白紙に8つを書き出せる必要はなく、
その気体が出てきたときに水に溶けることが、
判断できれば問題ありません。

そう考えればハードルは高くないですね。

これらは上方置換か下方置換で収集しますが、
空気より軽いか重いかで簡単に判断できますね。

アンモニアだけ赤字で書きましたが、
この中でアンモニアだけが空気より軽く、
上方置換を用います。

他は全て下方置換です。
とても簡単ですね。

Q. HF=20だから上方置換では?
HFは極性が強すぎて、気体状態でもほとんどが二量体を作っています。よって実質2HF=40となるため下方置換で収集します。

動画で復習

今回の記事は動画でも解説しているので、
ぜひそちらも御覧ください。

まとめ

今回は気体の製法についてまとめました。

「どうやって作ろう?」と考えれば、
無機化学の6つの反応からその場で反応式を作れるのですね。

もちろん実験室の都合によっては、
細かい暗記が混ざってくることもあります。

それでも理由と合わせておさえていくことで、
格段に暗記しやすさが変わってくるでしょう。

ぜひ何度か読み返してみてください。

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