熱分解反応!世界一わかりやすくまとめてみた

熱分解反応!世界一わかりやすくまとめてみた

今回は熱分解反応の解説をします。

化学反応には全て理由があります。

酸化還元反応は、
電子が欲しいやつが電子を奪い、
電子が捨てたいやつが電子を投げる反応、

弱酸・弱塩基の遊離反応や沈殿生成反応は、
化学平衡の原理を利用した反応でした。

熱分解反応の原理は単純で、
「熱のエネルギーで無理やり反応を起こす」
ということになります。

原理はわかりやすいですが、
その分反応の生成物の予想が難しいです。

熱分解反応の反応式を作るためには、
生成物を暗記していくしかないということです。

そこでこの記事では、
熱分解反応で覚えておくべき生成物を、
入試レベル的に過不足なく、できるだけわかりやすくまとめます。

生成物の予想が難しいとは言いましたが、
完全な丸暗記にはならないように、
できる限り反応の仕組みも説明します。

まとめて覚えておく方が良いので、
ぜひ最後まで見ていってください。

熱分解反応の生成物

まずは生成物のまとめ表を作っておきます。

細かい仕組みに興味がなければ、
この表だけを覚えておけば問題ありません。

熱分解反応まとめ
① 炭酸塩の熱分解
 炭酸塩 → 金属酸化物 + CO2
 例:CaCO3 → CaO + CO2
 (例外:アルカリ金属塩)

②炭酸水素塩の熱分解
 炭酸水素塩 → 炭酸塩 + CO2 + H2O
 例:Ca(HCO3)2 → CaCO3 + CO2 + H2O
   2NaHCO3 → Na2CO3 + CO2 + H2O

③金属水酸化物の熱分解
 金属水酸化物 → 金属酸化物 + H2O
 例:Cu(OH)2 → CuO + H2O
 (例外:アルカリ金属水酸化物)

④カルボン酸塩の熱分解
 カルボン酸塩 → CO2 + (金属酸化物など)
 例:(COO)2Ca → CO2 + CaO + CO

⑤その他の熱分解
 2KClO3 → 2KCl + 3O2 (MnO2触媒)
 2H2O2 → 2H2O + O2 (MnO2触媒)
 NH4NO2 → 2H2O + N2
 HCOOH → H2O + CO(濃硫酸)

スマホの1画面に収まるようになっているので、
スクショをしておくと便利です。

それでは順番に説明していきますね。

① 炭酸塩の熱分解

 炭酸塩 → 金属酸化物 + CO2
 例:CaCO3 → CaO + CO2
 (例外:アルカリ金属塩)

陽性の金属イオンと電気陰性度の強い酸素が、
強いイオン結合を作り
生成物が安定であるために反応が起こります。

金属の陽性の度合いが関係するため、
例えば同じ2族なら原子半径が小さい方が、
分解反応が進みやすいです。

MgCO3 > CaCO3 > SrCO3 > …
アルカリ金属塩が分解しにくいのは、
1価で陽性が小さく原子半径も大きいからです。

② 炭酸水素塩の熱分解

 炭酸水素塩 → 炭酸塩 + CO2 + H2O
 例:Ca(HCO3)2 → CaCO3 + CO2 + H2O
   2NaHCO3 → Na2CO3 + CO2 + H2O

中学生のときに、
「石灰水に二酸化炭素を通すと濁り、
さらに通すと透明になる」
というのがありましたね。

CaCO3 + CO2 + H2O → Ca(HCO3)2

ここで起こっている反応は以下の通りです。

CO32- + CO2 + H2O ⇄ 2HCO3

化学平衡は、
「エネルギーを放出する力」
「バラバラになろうとする力」
で成り立っていました。

温度を上げると一般によりバラバラになるため、
平衡が左に進んで反応が進みます。

【合わせてチェック】
絶対にわかる化学平衡の仕組み

③ 金属水酸化物の熱分解

 金属水酸化物 → 金属酸化物 + H2O
 例:Cu(OH)2 → CuO + H2O
 (例外:アルカリ金属水酸化物)

OH同士が水素結合で近づき、
それが熱によって追い出された、
と覚えておけばよいでしょう。

より詳しくは金属酸化物のあたりを復習しておきましょう。

④カルボン酸塩の熱分解

 カルボン酸塩 → CO2 + (金属酸化物など)
 例:(COO)2Ca → CO2 + CaO + CO

一般にカルボン酸塩は熱分解により炭酸塩になりやすいです。

無機化学の単元ではありますが、
有機化学の反応も少し紹介しておきます。

CH3COONa+NaOH → Na2CO3 + CH4
(CH3COO)2Ca → CaCO3 + CH3COCH3

⑤ その他の熱分解

 2KClO3 → 2KCl + 3O2 (MnO2触媒)
 2H2O2 → 2H2O + O2 (MnO2触媒)
 NH4NO2 → 2H2O + N2
 HCOOH → H2O + CO(濃硫酸)

2KClO3 → 2KCl + 3O2 (MnO2触媒)

より安定な酸化数へ変化するために、
分子内で酸化還元反応が発生しています。

2H2O2 → 2H2O + O2 (MnO2触媒)

H2Oは構造的な意味でも、
集合したときの水素結合的な意味でも安定です。

不安定なH2O2から、
総合的に見て安定な形に変化したと考えることができます。

NH4NO2 → 2H2O + N2

分子内で異なる酸化数だった同一原子が、
同じ酸化数に落ち着くために、
分子内で酸化還元反応が発生しています。

HCOOH → H2O + CO

濃硫酸で無理やり脱水される、
というイメージで問題ないでしょう。

KClO3とNH4NO2の反応は、
分子内で酸化還元反応が起こるので、
自己酸化還元反応」と呼ばれることもあります。

おまけ・注意点

熱分解とは違いますが、
以下のような反応も勉強しましたね。

2AgX → 2Ag + X2 (X:ハロゲン)

ハロゲン化銀の光分解です。

熱分解ではありませんが、
受験の知識としては必須なので覚えておきましょう。

また、以下のような水和物関係も、
物理的な変化に近いためのぞきました。

CaSO4・5H2O → CaSO4 + 5H2O (300℃)

最後に注意点ですが、
今回はあくまで入試レベルとしてまとめています。

加熱の仕方によっては、
「まじか!」という反応も起こってしまいます。

CaSO4・5H2O
   → CaSO4・H2O(150℃)
   → CaSO4(300℃)
   → CaO + SO3(900℃)

あくまで「受験知識」として押さえておいてください。

まとめ

お疲れさまでした。

今回は暗記前提だったので、
逆に素直に読めたかもしれません。

ただしその分、
暗記は何度も復習することも前提になってくるので、
生成物のまとめを何度も見直してください。

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