セッケンの原理・製法!合成洗剤まで解説【高校化学】

セッケンの原理・製法!合成洗剤まで解説【高校化学】


あなたは大学入試で必要なセッケンの知識を理解していますか?

「油脂をけん化するとできるもの」
のように曖昧に理解してしまっている人も多いです。

セッケンの理解が曖昧になってしまうのは、
セッケンの性質を原理から理解できていないからです。

ここではセッケンの原理、性質、製法をわかりやすく解説します。

ここの記事を最後まで読むことで、
大学入試で必要なセッケンの知識を網羅的に確認でき、
今までより深く理解できます。

今回は以下の流れで解説していきます。

セッケンが洗浄力を持つわけ

セッケン」とは、
以下のような構造をした高級脂肪酸の塩です。

長い炭化水素の部分は水に溶けづらい疎水基に、
先に付いた-COOの部分が親水基になっています。

あなたもご存知の通りセッケンには洗浄作用があります。

その仕組みを見てみましょう。
まず、繊維に油汚れがあったとしましょう。

ここにセッケンを加えると、
セッケンの疎水基と油が馴染みやすいので、
長い炭化水素が油に次々と刺さります。

そしてついにはセッケンが油を覆ってしまいます。

するとセッケンの親水基が汚れを取り囲み、
水に溶けることができるのです。

このように疎水基と親水基を持つことで、
水と油とを仲介してくれる物質を「界面活性剤」といいます。

セッケンは界面活性剤の性質があるから、
油汚れを取り除いてくれるのですね。

それではセッケンの原理がわかったところで、
製法・性質を順に確認していきましょう。

セッケンの製法・性質

セッケンは、油脂をけん化(NaOHで加水分解)することで得られます。

セッケンを水に溶かした場合、
疎水基同士が50~100個集まることで、
ミセル」と呼ばれるコロイド粒子を作ります。

この水溶液に油を入れて攪拌すると、
先ほど説明したようにセッケンが油を包み込みます。

このようにして、
油を水に溶かす性質を「乳化作用」といいます。

先ほども説明した通り、
疎水基と親水基を持つことで乳化作用を持つのが、
界面活性剤」です。

さて、油汚れをとってくれるセッケンですが、
実はいくつか弱点もあります。

弱点①:塩基性になってしまう

セッケンは脂肪酸という弱酸の塩です。

よって以下の「加水分解」を起こすことで、
塩基性になってしまいます。

\[
\mathrm{ RCOO^{-}+H_{2}O → RCOOH+OH^{-} }
\]

たとえば動物性の繊維は塩基に弱く、
条件によってはタンパク質が変性を起こしてしまいます。

だからセッケンは動物性繊維に利用できません。

弱点②:硬水中で利用できない

硬水とは、Ca2+やMg2+などの、
金属イオン含有量が多い水のことです。

硬水中でセッケンを使うと、
以下のような沈殿を作ってしまい洗浄力がなくなります。

\[
\mathrm{ 2RCOO^{-}+Ca^{2+} → (RCOO)_{2}Ca↓ }
\]

弱点③:強い酸性下で利用できない

さらにセッケンは弱酸の塩であるので、
強い酸性下では「弱酸遊離反応」を起こしてしまいます。

\[
\mathrm{ 2RCOONa + H^{+} → RCOOH + Na^{+} }
\]

こうして遊離した高級脂肪酸は水に溶けず、
油状の物質が遊離してきてしまうのです。

セッケンの性質まとめ

セッケンの性質をまとめると、
・油脂のけん化によって得られる
・界面活性剤であり、水溶液中ではミセルというコロイド状態で存在する
・乳化作用を持つ

となります。

そして弱点が、
①塩基性になってしまう
②硬水中で利用できない
③強い酸性下で利用できない

となります。

セッケンは自然界から得られる油脂に、
NaOHを加えるだけで得られるため便利でしたが、
その分弱点もあるのですね。

そしてこれらの弱点を克服するため作られたのが、
合成洗剤」です。

合成洗剤

セッケンの弱点のほとんどは、
脂肪酸が弱酸であることが原因になっていました。

そこで親水基になる部分を、
スルホン酸塩などの強酸に置き換えることで、
先ほどの弱点を克服することができます。

このようにして人工で作られる界面活性剤を、
合成洗剤」と呼びます。

セッケンと違い合成洗剤は中性で、
強酸を加えても洗浄力は変わりません。

さらにカルボン酸と違いCa2+やMg2+などと
沈殿を作ることもありません。

スルホン酸塩以外にも、
現在は非常に多くの種類の合成洗剤が作られています。

セッケンに比べて性能の高い合成洗剤ですが、
人工物であり自然の環境で分解されづらい、
というデメリットもあります。

まとめ

今回はセッケンの性質の解説でした。

主な性質が、
・油脂のけん化によって得られる
・界面活性剤であり、水溶液中ではミセルというコロイド状態で存在する
・乳化作用を持つ

弱点が、
①塩基性になってしまう
②硬水中で利用できない
③強い酸性下で利用できない

でしたね。

そしてその弱点を補おうとしてのが合成洗剤でした。

合成洗剤の化学式が問われることはあまりないので、
基本的にはセッケンの性質をよく復習しておきましょう。

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