陽イオン・陰イオンの検出法

陽イオン・陰イオンの検出法

この記事では溶液中のイオンの検出法をまとめます。

検出法では多くの場合沈殿生成反応を利用します。

沈殿生成反応は反応物や沈殿の色など、
覚えるべきことが多いですね。

そんな暗記量の多い沈殿も、
・陽イオンの系統分析
・イオンの検出法
の2つを学べばほとんど網羅することができます。

今回はそのうち「イオンの検出法」を解説します。

このページだけ読めば大丈夫なようにまとめるので、
ぜひ最後までご覧ください。

陽イオンの検出法

鉄Fe関連の入試で必須のものから、
少しマニアックなものまで合わせてまとめました。

加える薬品と合わせて、
色を中心に覚えていきましょう。

少しだけ説明を加えておきます。

クロム酸イオンCrO4

系統分析によって金属を分離したのち、
クロム酸イオンを用いて各イオンの存在を確認できます。

例えば塩酸(Cl)によってAg+、Pb2+、Hg22+が沈殿し、
これを熱するとPb2+のみが溶け、
残った沈殿にNH3を入れるとAg+が溶けます。

これらにそれぞれCrO4を入れれば、
Ag+ではAg2CrO4の赤褐色沈殿、
Pb2+ではPbCrO4の黄色沈殿が生じます。

これによってPbとAgの存在が確認できました。

また炭酸イオンCO32-によって沈殿したBaCO3は、
塩酸を加えると弱酸遊離反応で再溶解し、
そこにCrO4を加えれば黄色沈殿となります。

鉄Fe関連

鉄(Ⅱ)イオンFe2+にK3[Fe(CN)6]を加えると濃青色沈殿、
鉄(Ⅲ)イオンFe3+にK4[Fe(CN)6]を加えると濃青色沈殿となります。

一般にこの沈殿は同じものと考えて構いません。

具体的には、

Fe2++K3[Fe(CN)6]→KFeFe(CN)6
Fe3++K4[Fe(CN)6]→KFeFe(CN)6

の沈殿生成において、
KFeFe(CN)6=KFeFe(CN)6=KFe2(CN)6
とみなせるからです。

またFe3+にチオシアン酸イオンSCNを入れると、
溶液の色が血赤色になります。

教科書ではFe(SCN)3と書かれたりしますが、
正確には配位子の数はきっちり決まっておらず、
「[Fe(H2O)6-n(SCN)n]3-n(n=1〜6)」という状態になっています。

KFeFe(CN)6とKFeFe(CN)6は発見当初は別のものと考えられ、前者の色を「ターンブル青」、後者の色を「紺青」と呼びました。

陰イオンの検出法

こちらは陽イオンに増してマニアックです。
あくまで参考程度に確認しておきましょう。

ハロゲン+Ag+

フッ素以外のハロゲンは沈殿を作ります。

またAgClはアンモニアを加えると、
錯イオン[Ag(NH3)2]+を作って溶けます。

これらはハロゲンの電気陰性度の差から理解しましょう。

ハロゲンの電気陰性度の大きさは、
F>Cl>Br>Iの順でした。

電気陰性度が非常に強いフッ素Fは、
AgFの状態で極性が強くなり水に溶けます。

AgCl、AgBr、AgIは沈殿しますが、
アンモニア水を加えると次に極性が強いAgClがよく溶け、
AgBrは少しだけ溶け、AgIは溶けません。

まとめれば、
・ハロゲン化銀のうちAgFのみ水溶性
・ハロゲン化銀のうちAgIのみNH3水に不溶
となります。

センター頻出なのできちんと理解して覚えておきましょう。

電気陰性度がF>Cl>Br>Iとなるのは、原子半径から説明できます。原子半径の大きさはI>Br>Cl>Fであり、原子半径が大きいほど最外殻電子を引っ張る力が弱くなるから電気陰性度は原子半径の逆順になります。

褐色環反応

硝酸イオンNO3の検出反応としては、
褐色環反応」が有名です。

褐色環反応は濃硫酸と硫酸鉄を加えて、
濃硫酸が硝酸イオンを還元して一酸化窒素NOを作り、
鉄との錯イオン[Fe(NO)(H2O)5]2+(褐色)を作る反応です。

参考程度に覚えておきましょう。

その他の陰イオンの検出法

その他の陰イオンは、
無機化学の6つの反応で単純に説明できます。

以下も参考にしてみましょう。

酸化還元反応の仕組みを酸化数から理解しよう!

参考:系統分析

溶液中にどの金属イオンがあるかを分析するのが、
金属イオンの「系統分析」です。

系統分析については以下に詳しくまとめたので、
ぜひそちらも見てみてください。

陽イオンの系統分析

まとめ

陽イオン・陰イオンの検出法を解説しました。

かなりマニアックなものまでまとめましたが、
まとまっているだけでかなり覚えやすいと思います。

もう一度まとめを貼っておきますね。

スクショなどをして何度も確認しておきましょう。

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